薔薇は赤い。
スミレは青い。
それなら黄色は何の色?
お姫さまは王子様のキスで目覚め、
悪い魔女は火あぶりにして殺してしまえ。
悪くなくても火あぶりになるんだもの。
眠りの城も茨の森も、どっちにしたって同じ道。
メアリ、メアリ、君はそれでも欲しかったのかい?
(ああ、私はそれでも、欲しかったんです)
暗闇に落ちた視界では、星の光は遠すぎる。
代わりに嵌め込む紅玉色は、呪いの籠った魔女のそれ。
擦れて嗄れた声では、愛を語れも歌えもしない。
代わりに鳴らす鈴の鳴り音は、美しく歪んだ魔女のそれ。
細く脆い両の足は、力を入れても立てやしない。
代わりに生やす一対は、濡れて蠢く魔女のそれ。
誰かが年を重ねて行く度、自分にはその意味がないのだと知る。
どれだけ年を重ねようとも、最早成長の余地もないこの身体。
成長もしない、まがい物の身体で生き続ける意味など、本当はないのかもしれない。
それでも、ああ、それでもだ。
ボクは欲しくて仕方がないんだ。紛い物はいつも、本物に憧れる。
あのまっすぐな輝きは、いつだってボクの目を灼いてしまうんだ。
メアリ、メアリ、君の欲しかったものはなんだい?
(きっと、それは紛い物なんかじゃないほんものの)
PR